毎日の介護食を少しでもおいしく食べてもらいたいと思う人は多いでしょう。介護食といってもいくつかの種類があり、それぞれ役割が異なります。介護食を選ぶ際は、種類ごとの特徴を知ることが必要です。この記事では、介護食の種類をはじめ、おいしく食べるポイントや注意点について解説します。

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介護食とは?

固い、パサパサしている、口の中でまとまらないなど、咀嚼や嚥下がしにくい食べ物は、飲み込みにくいため、喉に詰まったり、気管に入りそうになりむせたりすることがあります。介護食とは、食べ物を噛む「咀嚼力」や食べ物を飲み込む「嚥下力」が低下している人に向けて、食べやすく工夫した食事です。

高齢者食との違い

介護食と混同されやすいものとして「高齢者食」が挙げられます。高齢者食とは、食材の形を損なわない程度に煮込んだりスライスしたりする食事です。介護食は、食べる人の咀嚼力や嚥下力に合わせて固さや形状に調節した食事であり、高齢者食よりも飲食の機能を補助する目的があります。

介護食の目的

介護食の目的にはさまざまなものがありますが、主な目的は以下のとおりです。

自分の口から食べる

栄養を摂る手段として、経口摂取以外では、経鼻栄養、胃ろう栄養、中心静脈栄養、末梢静脈栄養などの手段があります。経口摂取は唾液を分泌するため、口腔環境悪化の予防や消化器官に刺激を与えることが期待できる方法です。また、全身の免疫屴の維持にも繋がります。自ら食べる力がある場合は、できる限り経口摂取を継続したほうが良いでしょう。

誤嚥を防ぐ

噛む力が衰えると上手に咀嚼ができないため、固形物が気道に詰まる、気管に入るなどのリスクが高まります。介護食には、食べる能力に見合ったものを提供し、飲み込んだ食べ物などが気道(気管)に入る誤嚥を防ぐという目的もあります。

必要な栄養素を摂る

食べる能力に見合わない食事は、食べることが疎かになりやすく栄養も不足してしまう傾向にあります。低栄養状態になると身体機能や免疫力が低下するため、健康状態の悪化につながることから食べる能力に見合った食事を摂ることは重要です。

日々の刺激になる

食事の目的は、単に栄養を摂取するだけではありません。食事は精神的な満足感も得られるため、食事の時間が楽しみになる場合もあります。日常生活で刺激を受ける機会が少ない要介護者にとっては、満足感や満腹感が生活の刺激になることもあるでしょう。

介護食の種類

介護食にはさまざまな種類があります。主な種類は以下のとおりです。

ソフト食(軟菜食)

歯ぐきや舌でつぶせる程度の食事です。噛む力・飲み込む力が低下している、胃腸が弱い場合などに向いています。

ゼリー・ムース食

液状のものや食材をミキサーにかけてペーストにしたものにゲル化剤(ゼリー食用増粘剤等)でゼリーやムース状に固め直した食事です。噛む力や飲み込む力がかなり弱い場合などに向いています。

ピューレ食

食材にスープや出汁を加えて粒のない液状にした食事です。噛む力・飲み込む力が共に低下している場合に向いています。ただし、食材の水分量が多すぎるとむせてしまうことがあるので、適度な粘度に仕上げる必要があります。
食事の目的は、単に栄養を摂取するだけではありません。食事は精神的な満足感も得られるため、食事の時間が楽しみになる場合もあります。日常生活で刺激を受ける機会が少ない要介護者にとっては、満足感や満腹感が生活の刺激になることもあるでしょう。

市販されている介護食の種類

介護食は市販もされています。市販されている介護食には、以下のような種類があります。

スマイルケア食

介護食の定義や範囲を農林水産省が整理した枠組みであり、各自の状態に応じた介護食の選択に寄与するものを指します。青マーク、黄マーク、赤マークに分かれているのが特徴です。

ユニバーサルデザインフード

食べやすさを考えて作られた食品です。例えば、一般的な食事から介護が必要な人の食事まで幅広く活用できるレトルトの調理済み食品や、とろみ付けのための調整食品などが含まれます。ユニバーサルデザインフードには、専用のマークがパッケージに表示されています。

レトルト食・冷凍食品

レトルト食品や冷凍食品のなかにも介護食に対応しているものがあります。特に冷凍食品は、冷蔵食品よりも長い間新鮮さや栄養素を保つことができるので、品質が良いものを手軽においしく食べることができます。

介護食を作るときは食事形態に合わせて調理する

介護食を作る際には、食べる力や体調、過去の病歴など、状況に応じた食事の形態に合わせ、調理することが重要です。スマイルケア食やユニバーサルデザインフードの分類を参考にするとよいでしょう。

介護食に必要な5つの要素

介護食には、以下のような要素が必要です。調理の際の参考にしてください。

噛みやすい

噛みやすさに考慮しなければ、食べたものをうまく噛めずに飲み込むまでに時間がかかってしまうことがあります。食材に切れ目を入れる、食材の切り方を小さくするなどの工夫が必要です。

飲み込みやすい

食べたものを飲み込む力が衰えている場合は、誤嚥が起こりやすくなります。やわらかくして飲み込みやすくする、とろみをつけて飲み込みやすくするなどの工夫が必要です。

塩分が控えめ

塩分の過度な摂取は控えなければなりませんが、味が薄すぎるとおいしさを感じにくくなります。香辛料などを上手に使って、味にメリハリをつけるなどの工夫が必要です。

栄養バランスが良い

要介護者には、必要な栄養素をバランスよく取り入れることが重要です。高齢者の場合は低栄養や筋力・筋肉量の低下予防ために、エネルギーやたんぱく質を多く含んだ食事やその吸収をよくするビタミンDを一緒に摂取するとよいでしょう。糖尿病や腎臓病などの栄養指導を受けている場合は主治医や管理栄養士へ相談しましょう。

見た目が良い

食事は味や香りだけではなく、見た目も食べる意欲を大きく左右します。彩りを豊かにする、おいしそうに盛りつけるなど、食欲がわくような工夫をすることも重要です。

介護食を食べる際の流れ

介護食は食べ方を間違えると事故につながるリスクがあります。介護食を食べる際の流れを意識しておくとよいでしょう。

食事前

集中して食事するために、事前にトイレを済ませておきます。また、食事に集中するためには、テレビなどを消すなどの工夫も必要です。のどに詰まる、気管に入るリスクを軽減するため、顎を軽く引くような姿勢にします。

食事中

食べる速度が遅くても、焦らずに楽しく食事ができるようにすることも重要です。また、喉の詰まりを防ぐために、食事前の水分補給や飲み込む力が衰えている場合は食事と食事の間に、とろみ茶やお茶ゼリーを食べて口の中の食べかすがきれいになってから次食べていただくとよいでしょう。

食後

食べた量で健康状態に異常がないかを確認します。食後は横になると食べ物が逆流するケースがあるので、食後に横になるのを防ぎましょう。

介護食をおいしく食べるポイント

介護食をおいしく食べるポイントは以下のとおりです。少しの工夫で食事の時間が楽しみになることもあります。

楽しい雰囲気づくりを心がける

普通食と異なる調理法で作られた介護食は、ネガティブな気持ちになることもあるので、楽しい雰囲気づくりを心がけましょう。清潔で片付いた場所、騒音やそのほかの邪魔が入らない場所であることも重要です。

食べやすい食器を利用する

手の力が衰えている場合などは、滑りにくく軽くて持ちやすい食器を選びます。食器を上手に持てない場合は、テーブルに置いたときに滑りにくい食器(少し重さがあるもの、食器の底にシリコンなどの滑り止めが付いているもの等)手や指先が自由に使えない方向けに工夫された「介護食器」を利用するのもおすすめです。

好きな食べ物を把握しておく

好きな食べ物を把握しておき、介護食を楽しんでもらうことも重要です。好きな食べ物をそのままの形で提供するのは難しいですが、介護食でも味や風味は工夫で活かせることもあります。

介護食に関する注意点

介護食を提供する際にはさまざまな注意が必要です。以下のような点には特に注意しましょう。

正しい姿勢で食べる

姿勢が悪いと誤嚥につながるケースがあります。両足は床につけ、両肘はテーブルにつけて座位を安定させます。誤嚥しないように顎を軽く引いた姿勢をとることが重要です。椅子に座ることが難しい場合は、必ず専門職へ相談して、その方に適したリクライニングのチェアやベットの角度・姿勢を調整しましょう。

目が覚めた状態で食べる

完全に目覚めていないときに食事をするのは、誤嚥につながります。お腹が空いた状態であり、意識がはっきりしてから自身で食べてもらったり食事介助したりすることが重要です。

食べたくなる工夫をする

自らの意思でおいしく食べたいと思ってくれるような工夫が必要になります。食べやすい形状にするのはもちろんのこと、食の嗜好を尊重する、興味を引く献立を作る、色味や盛り付けを工夫するなどの方法が有効です。

食べる人の気持ちを大切にする

毎日同じ場所で孤独に食事をする場合は、ストレスを感じることもあります。誰かと一緒に食卓を囲む、雰囲気の違う部屋で食べるなど、要介護者の気持ちに寄り添って対応することも必要です。

介護食の種類や選び方に迷ったら専門家に相談することが大切

介護食の種類や選び方などで迷った際は、専門家である以下のような人たちに相談することがおすすめです。
・主治医
・看護師
・管理栄養士
・言語聴覚士などのリハビリ職
・介護支援専門員(ケアマネジャー)

まとめ

介護食は、食べる人の咀嚼力や嚥下力、体調、生活環境に合わせて適切に選ぶことが重要です。必要に応じてスマイルケア食やユニバーサルデザインフードを活用し、専門家の助言も取り入れながら、その人に合った食事を提供していきましょう。
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