衰えた筋肉を以前のように取り戻したい、と考える高齢者は多いのではないでしょうか。病気やケガで動かない時間が増えると一時的に筋肉は減少しますが、適切に取り組めば状況の改善は十分可能です。この記事では、高齢者が衰えた筋肉を取り戻す方法について、食事や運動面のポイントから解説します。ぜひ参考にしてください。

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高齢者でも衰えた筋肉を取り戻すことは可能

個人差がありますが、高齢者でも日頃の意識づけにより筋肉を取り戻すことは可能です。筋肉が衰えたように感じる人や、入院などを経て体力が衰えたと心配している人は、日々の地道な努力により筋肉を取り戻しましょう。

高齢者が衰えた筋肉を取り戻すメリット

高齢者が衰えた筋肉を取り戻すメリットについて、サルコペニア対策と健康増進の観点から解説します。

サルコペニアを予防する

加齢や疾患によって筋肉量や筋肉が衰え、日常動作に支障をきたすようになった状態を「サルコペニア」と呼びます。筋力および筋肉量の維持・向上によりサルコペニアの進行を抑制・予防することができると、自立した生活を継続しやすくなり、介護が必要な状態に陥るリスクを軽減できます。

健康増進につながる

筋肉量を増やすことは、病気の予防だけではなく、転倒や骨折といったケガの予防にも役立ちます。また、体を動かして精神面によい刺激がもたらされると、心身両面での健康維持が期待できます。

高齢者の筋肉が落ちやすい理由

高齢者の筋力低下には複数の要因がかかわっています。例えば日常的な身体活動の減少、病気による影響、栄養の偏りなどが、おもな原因として挙げられます。無理のない範囲での軽い運動を取り入れたり、食生活を見直したりすることによって、筋肉の衰えを防ぎましょう。

高齢者が衰えた筋肉を取り戻す方法

高齢者が衰えた筋肉を取り戻す方法について、運動と栄養、睡眠の観点から解説します。

筋力トレーニング(筋トレ)をする

筋力トレには、衰えた筋肉を取り戻す効果があります。特におすすめのトレーニングは、スクワットです。下半身の筋力が衰えると歩行困難となり、将来的に寝たきり状態に陥る危険性が増すためです。
負担の大きな筋トレではなくても、つま先やかかとの上下運動といった簡単な動作でも、筋肉を鍛えることができます。

有酸素運動をする

有酸素運動を組み合わせると、筋トレの成果をより高められます。高齢者の場合は、ウォーキングや軽いジョギングなどがおすすめです。
有酸素運動を続けると、筋肉が鍛えられるとともに、持久力や心肺機能の改善、ホルモンバランスの正常化も期待できます。総合的な健康増進に向け、生活に有酸素運動を取り入れましょう。

しっかり睡眠をとる

筋トレや有酸素運動をした後は、しっかり睡眠をとって体を休ませましょう。質のよい睡眠をとると、成長ホルモンが活発に分泌されます。成長ホルモンは骨格や筋組織の発達・修復を促進する重要な役割を担っています。

寝たきり状態でも体を動かす

病気やケガにより入院して安静が必要な状況でも、筋肉を維持する努力は重要です。ベッド上での寝返りや軽いマッサージを行うことで、筋肉の衰えをある程度抑制できます。自力での寝返りが困難な高齢者の場合は、家族や医療スタッフの支援を受けながら体を動かすことが効果的です。
退院して自宅療養に移った際は、まずストレッチから開始し、体調に合わせて段階的に負荷のかかる筋トレに移行しましょう。

食生活を見直す

衰えた筋肉を取り戻すには、食事を通じた十分なエネルギー摂取が必要です。特に、筋組織の材料となるたんぱく質の意識的な摂取が望まれます。たんぱく質は、肉類や魚類、卵、大豆製品、乳製品などに豊富に含まれます。
ただし、腎機能に問題がある人は、たんぱく質の過剰摂取に注意が必要です。自己判断で食生活を見直す前に、事前に医師や管理栄養士へ相談をしましょう。

高齢者の食生活の目安となるたんぱく質摂取量

高齢者が衰えた筋肉を取り戻すにあたり、食事から一定量のたんぱく質を摂取する必要があります。東京都福祉局によると、高齢者が1日に必要とするたんぱく質の摂取量は、体重1kgあたり1.0~1.2gが適切とされています※。
例えば、体重60kgの人であれば、60~72g程度がたんぱく質の1日あたりの推奨摂取量です。
※(参考)鮭1切れ(80g):たんぱく質量約20g、豆腐半丁(150g):たんぱく質量約10g

高齢者が衰えた筋肉を取り戻すための食事のポイント

たんぱく質の摂取と併せて、高齢者が衰えた筋肉を取り戻すための食事のポイントを解説します。

良質なたんぱく質を摂取する

たんぱく質といっても、色々な種類がありますが、おすすめなのは「動物性」たんぱく質です。「動物性」たんぱく質は筋肉を作る力が強く、体に吸収されやすいのが特長です。またBCAA(分岐鎖アミノ酸:バリン・ロイシン・イソロイシン)は、たんぱく質の中でも筋肉との関係が特に深い栄養素なので、サルコペニア予防や高齢者の健康維持においても重要です。
中でもロイシンは筋組織の合成を活発化させる働きを持つアミノ酸で、筋力回復において中心的な役割を果たします。ロイシンは動物性たんぱく質、乳製品、卵類、大豆製品などに多く含まれているため、意識的に食事に取り入れましょう。

栄養バランスを意識する

健康維持において、各栄養素は独自の機能を担っています。単一の栄養素に偏ることなく、バランスの取れた食事を心がけると、筋トレの成果をより引き出せます。

運動後にたんぱく質を摂る

運動をすると、筋肉は少し傷つきます。しかし、運動後にしっかり栄養を摂ることで筋肉は強くなっていきます。特に大事なのが「たんぱく質」です。たんぱく質は、体の中で「アミノ酸」に分かれて、筋肉の修理材料になります。運動後は、出来るだけ45分以内にたんぱく質をとると筋肉の回復が早くなると言われています。

寝たきりになった高齢者が衰えた筋肉を取り戻すためにかかる期間

寝たきり状態になると、筋力の低下は非常に早く進み、特に脚の筋力はわずか1週間で10〜15%低下することもあります。これは、高齢者では日常生活への影響が大きく、転倒や要介護リスクが高まるため注意が必要です。また、低下した筋力を元のレベルまで回復させるには、寝たきりだった期間のおよそ3~4倍の時間が必要になることが多いとされています。たとえば、2週間の安静で落ちた筋力を回復するには、約1~2か月のリハビリや運動が必要です。
失った筋肉を取り戻すのは容易ではないため、可能な限り筋肉の衰えを避ける生活を心がけましょう。また、寝たきりから回復し次第、筋力回復に向けた食生活や運動の見直しをおすすめします。

筋肉回復を目指す高齢者の食生活で意識したいその他の栄養素

筋肉を取り戻すには、たんぱく質だけでなく、それを活かすための‘栄養サポート’も大切です。ここでは、高齢者が意識したいその他の栄養素について解説します。

脂質や糖質

体の中では、「たんぱく質」が筋肉の材料になりますが、材料だけでは筋肉は育ちません。「脂質(あぶら)」や「糖質(ごはんなど)」は、体や筋肉を動かす‘ガソリン’のようなものです。
これらが足りないと、体は筋肉を分解してガソリンの代わりに使おうとします。つまり、エネルギー不足は、筋肉がどんどん減ってしまいます。「あぶら」や「ごはん」も大事な栄養です。摂りすぎず、でも抜かずに食べましょう。

ビタミン

ビタミンは、筋肉づくりを支える‘縁の下の力持ち’のような栄養素です。たとえば、ビタミンDは、筋肉を動かす力を高めることで転倒予防に関係すると言われています。
他にもビタミンB群は、食べたものからエネルギーを作り出す働きを助けてくれます。ビタミンは野菜類、果実類、キノコ類に豊富に含まれているため、主食や主菜と併せてバランスよく摂取すると、筋力回復をより効果的にサポートできます。

ミネラル

筋トレやウォーキングなどで汗をかくと、体の中の大切なミネラルが減ってしまいます。ミネラルが足りなくなると、骨がもろくなったり風邪を引きやすくなったり神経がうまく働かなくなることもあります。
野菜や果物、牛乳・ヨーグルトなどをしっかり食べることで、ミネラルをバランスよく補えます。毎日の食事で筋肉だけでなく体全体の健康を守ることができます。

高齢者におすすめのたんぱく質をたっぷり摂れるメニュー

高齢者が衰えた筋肉を取り戻す際に取り入れたい、たんぱく質が豊富なメニューを紹介します。

サーモンフライ

サーモンは、「動物性」たんぱく質を豊富に含んだ栄養がたっぷり詰まった魚です。
脂もほどよく、消化もしやすいので、年齢を問わず食べやすいのが特長です。
サーモンに含まれる「アスタキサンチン」という赤い色の成分には、筋肉の疲れをやわらげたり、体のサビつきを防いだりする働き(抗酸化作用)があります。フライにすることで、香ばしく、食べごたえのある一品になります。食欲が落ちがちな時にも、おいしくたんぱく質をしっかりとれるおすすめメニューです。

豆腐ハンバーグ

豆腐、鶏挽肉、卵を組み合わせた豆腐ハンバーグは、複数の食材からたんぱく質を摂取できるメニューです。「動物性」と「植物性」のたんぱく質を同時に取り入れることで、からだの中で合成することが出来ない‘必須アミノ酸’のバランスを改善する効果が期待できます。
また、豆腐ハンバーグは通常のハンバーグよりも食感が柔らかく、咀嚼力が低下した高齢者でも食べやすいメニューです。

高齢者が衰えた筋肉を取り戻すために注意すること

高齢者が衰えた筋肉を取り戻すために注意することを、運動のタイミングと負荷の観点から解説します。

空腹・満腹状態での運動は避ける

空腹・満腹状態での運動は避けましょう。食事から2~3時間程度経過した頃合いが、運動を行うのに理想のタイミングです。
空腹のときに運動をすると、体に必要なエネルギーが不足してしまいます。そのため、体は筋肉を使ってエネルギーを作ろうとすることがあり、その結果筋肉が減ってしまうことがあります。
反対に、満腹の状態で運動をすると、胃の調子が悪くなったり、動くのがおっくうになったりしてしまいます。運動するなら「軽く食べたあと」くらいがちょうどいいタイミングです。

無理な運動は避ける

過度に激しい運動は、体に負担をかけ、病気やケガを招くリスクがあります。まずはウォーキングや軽いジョギング、ストレッチングなどの体に負担をかけすぎない運動から開始し、徐々に強度を上げていきましょう。

まとめ

高齢になると筋肉が衰えやすくなりますが、適切な食事と運動を続けることで、筋肉を取り戻すことは十分可能です。食生活では、栄養バランスを考えながら、特にたんぱく質を意識的に摂取しましょう。また、健康的な食事に適度な運動を組み合わせることで、衰えてしまった筋力も少しずつ回復させることができます。
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